和紙:紙は長期の保存に耐えられ、扱いやすく現在では日本画の中心的な素材。
墨:煤(すす)を膠で練り上げ、木型に入れて乾燥させたものや、液体状の墨使用。
岩絵具:天然の鉱物を細かく砕いた絵具が天然岩絵具で、粒子の大きさによって色の濃淡が分かれ、また、絵具を焼くことで色を変えることもできる。膠が接着材として使用される。
胡粉:最高品質の胡粉は、天然のいたぼ牡蠣(かき)の貝殻で製造されたものであり、胡粉はそもそもは奈良時代に中国から輸入された鉛白であったが、室町時代以降は牡蠣殻の胡粉が一般的となった。これも膠を接着材として使用される。
箔・泥:金属を薄く延ばしたものを箔という。金箔、銀箔、プラチナ箔などがある。
膠:獣や魚の皮や骨などのタンパク質を煮て取り出したゼラチンで、古くから接着剤として使用されている。膠は主に鹿膠が多く使用される。膠が多すぎると絵具がひび割れしやすく、少ないと剥落しやすい。
練りゴム
硯と墨
和紙
日本古来の製法による紙を和紙と呼びます。和紙は手漉〔す〕きによって作られているため、非常に強く吸湿性に富み、書画のみならず工芸用にも使用されています。また、伝統によって受け継がれた各地の特徴ある和紙は、その質や柄などの素晴らしさから日本を越え世界中で認められ、愛され続けています。 また、和紙は原料別に「楮紙〔こうぞし〕」「三椏紙〔みつまたし〕」「雁皮紙〔がんぴし〕」の三種類に分けられます。この三種類を基盤に、産地や製造法によって様々な種類の和紙が生み出されています。
楮紙こうぞし
楮を主な原料として生産された和紙は、強度に優れ障子、公文書、絵画、書道などに使われています。どこでも栽培できるという楮の特徴から、各地で生産されている最もポピュラーな和紙です。 原料となる楮はクワ科の落葉低木です。西日本の山地に自生し、繊維作物として各地で栽培されています。楮の繊維の長さは15~20ミリで強度に優れ、美しく、しなやかな仕上がりとなります。 主な和紙に、内山紙・越中和紙・因習和紙・石州和紙・阿波和紙・土佐和紙・大洲和紙などがあります。
三椏紙みつまたし
三椏紙は薄くて吸水性に優れているため、紙幣、印刷、エッチング、はがき、製本などに適しています。 原料となる三椏はジンチョウゲ科の落葉低木で、日本では暖地で栽培されます。高さ約2メートル。枝が三つに分れていることから、この名前がついたと言われています。三椏の繊維の長さは4~5ミりです。非常に滑らかで、吸水性に優れ豊かな光沢のある仕上がりになります。主なものに図引紙があります。また、現在の日本の紙幣は三椏を原料に作られています。 日本では17世紀につくりはじめられたと考えられ、江戸時代には駿河(静岡県中部)・甲斐(山梨県)で駿河半紙が多く作られ、明治期には高知県で柳紙、愛媛県で改良半紙などがつくられました。
雁皮紙がんぴし
雁皮紙は虫害に強く、耐久性も備えているので印刷、エッチング、日本画、写経などに使われます。 原料となる雁皮はジンチョウゲ科の落葉低木で西日本の山地に自生します。高さ約2メートルで、新枝・葉に絹糸状の毛があり、夏、梢上に半球状に並んだ黄色の小花を開きます。栽培が困難で自生のものに頼らざるをえなく、ごくわずかしか生産できません。 楮紙と混ぜて漉くことも多く、繊維の長さは4~5ミリです。虫害に強く耐久性に優れており、表面が滑らかで書きやすい仕上がりになります。 主なものに越前和紙・名塩和紙・加賀雁皮紙などがあります。
鳥の子紙 とりのこし
鳥の子紙は嘉暦年間(1326~28)文献に初出し、上代の斐紙(ひし)と同様、雁皮を材料とする。紙の色が鶏卵に似ているところから、鳥之子紙、鳥之子色紙と呼ばれ、越前が主産地となっている。和漢三才図会には「肌滑らかにして書き良く、性堅、耐久、紙王と謂うべきものか」と称賛され、虫害にかからぬ特色を買われて、上層階級では永久的な保存の望ましい書冊の作成に愛用された。また、三椏、楮などを2~3割混入することで雁皮のやや強い光沢に抑え一層気品の高い、持ち味の豊かな鳥之子紙を漉き出す工夫をなされている。